- 藤田 直晴 教授
- 明治大学
文学部 史学地理学科 1947年山梨県生まれ。’79年明治大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。’81年明治大学文学部専任講師。’87年同助教授。’92年より現職。’96年スウェーデン・リンシェービン大学産業経済学科客員教授。’04年カナダ・トロント大学地理学科客員教授。日本カナダ学会会長。主な著作に『世界都市の論理』(訳および編著・鹿島出版会)『政治地理学』(中国語版・共著・中国で出版)『東京:巨大空間の諸相』(大明堂)『はじめて出会うカナダ』(共著・有斐閣)などがある。
現地フィールドワークを重視する「都市地理学」

- 藤田研究室のある駿河台校舎研究棟

- 明治大学駿河台キャンパスの建物群
「私どもの専攻のモットーは『歩く、観る、考える』です。まずフィールドワークを中心に実態を把握して、さらにその背景になっている要因を解明していくことを教育指導の方針にしています」
そう語るのは、明治大学文学部史学地理学科地理学専攻の藤田直晴教授である。一昨年まで、大学副学長職にもあった藤田先生に、まず高校で学ぶ地理と大学で学ぶ地理学との違いについて聞いた。
「高校までに学ぶ地理は暗記することが中心で、地名や地勢・産物・交易などについて学習します。そうしたことは地理のみでなく、あらゆる分野の学習における基礎知識ですから、これはこれでとても重要です。大学ではこれらをベースにしながら、たとえば、何故ある地域に特定の農産物の産地が形成されるようになるのか? 何故いろいろな規模の都市がさまざまな地域に発達しているのか? そのロジックや要因について分析研究することになります。そこが大きく違うところですね」
大学で地理学を学ぶ要諦は、現地を見ることに尽きるという。そのため国内・国外を問わず、旅に出て見聞を広めることを学生に勧めているとも語る。
「明治大学ではアフリカの大学に協定校がありませんでしたが、わたしが国際交流センター所長をしていたときに、南アフリカ共和国の2つの大学と初めて協定を結びました。学生たちに、より地球レベルで、社会や文化に遭遇をしてほしいという期待を込めてのことでした。大学の留学制度を利用して、海外にも積極的に出てほしいですね」
自分が慣れ親しんでいる生活空間から、一歩踏み出して冒険の旅に出ることを提唱してきた藤田先生。そんな先生ご自身が専門にしているのは、「都市地理学」と「カナダ地域研究」である。まず都市地理学のほうから説明してもらった。
「現代の都市(とりわけ東京・ロンドン・ニューヨークなど)の発達について、本社オフィス街や娯楽地区・スラム地域・高級住宅地などの、多様な住宅地域・商業地域といった都市空間が、どのように発展・衰退し、全体として編成されているのか? また、それらに関する大都市間の比較研究に関心をもっています」
「地理学ですので、都市間の差異を明らかにし、その原因について解明するように努めています。一例ですが、日本では、地方発生の多くの企業が業績の拡大とともに本社を東京に移し、さらには海外にネットワークを広げてきています」
少子高齢化に対するカナダの国家的実験の成果に学ぶべし

- 明大のランドマーク「リバティタワー」
このほか藤田先生は、各大都市形成の要因について具体的な例を交えて話してくれた。さらに、経済活動におけるグローバル化は自然の流れであり、必然的にその方向に向かっていること、いま政治的な国境を越えて、いわゆる「コーポレート・エンパイア」(企業帝国)が一般的に見られるようになってきていること――等々、グローバル化時代の企業(多国籍化する)の活動の実態と意味について、興味深い話題の数々を聞かせてくれた。
藤田先生のもうひとつの研究課題はカナダ地域研究である。なお先生は、日本カナダ学会の会長を長く務め、この分野の研究では第一人者である。
「カナダは、日本と同じように少子高齢化や人口減少問題を抱えた国でした。ところが現在の人口の構成バランスはとても良くなっています。それは毎年20万人からの移民を受け入れてきたからです。こうした移民の人々に対して、自分たちの文化に同化することをカナダは強要しません。他民族の文化は文化としてお互いに認め合い、『モザイク社会』の建設を進めている多民族国家です。しかも、日本やアメリカなどと比べても社会保障は充実しており、移民の人々への差別もほとんどなく、とても暮らし良い国なのです」
ここに至るまでのカナダも決して平坦な歩みではなかったようだ。だが、カナダの第2次世界大戦後の試みは、現代の日本が抱えている問題への道標的な示唆を与えてくれるだろう。
不況下の浜松市在住ブラジル人労働者たちの実態に迫る

- タワー側からの駿河台キャンパス全景
明治大学文学部地理学専攻のゼミ演習は、1年次が基礎演習で、2年次が研究法、3年次からが専門ゼミになり、それが4年次の卒業論文につながるというように進んでいく。ここでは3年次の専門ゼミについて見ていこう。
「3年次のゼミでは、夏休みにテーマを決めて地理学実習を行ないます。前期はそのための下調べや調査に充てます。その調査に関連する論文を読んでデータを集め、それに基づいた調査票を作成して、現地に乗り込んでフィールドワーク調査をすることになります」
藤田ゼミの今年度の実習は、アメリカ発の世界同時金融不況下における、浜松市(静岡県)在住の日系ブラジル人労働者たちの就労実態・生活実態の調査がテーマだ。
「この局面で、彼ら日系ブラジル人社会がどのような現実的問題に直面しているのか? どのように乗り切ろうとしているのか? そうした実態があまりマスコミ等でも伝わってきません。この問題については、我々こそが今ここで検証しないといけないと考えまして、今年度の調査テーマにしました」
4年次のゼミ生は1年間かけて卒業論文の作成に励む。そのテーマは「地理学に関するものであれば何でもあり!」で、藤田先生の守備範囲を超えるテーマであっても原則OKだそうだ。あらためて学生たちへの指導法方針については――
「私のところを巣立って、たとえば国際公務員にでもなって、どんどん海外に出てグローバルな活躍をするような、意欲的な人材を育てたいですね。民間企業なら、NYウォール街で活躍する人とか、あるいは国際的な研究機関で働くのもいいでしょう。そんな人材を男女の別なく育てたいと考えています」
また藤田ゼミの出身者には大学教員になる人もおり、すでに准教授の肩書きで活躍している人も幾人かいるという。
こんな生徒に来てほしい
とにかく若者らしく意欲的な人がいいですね。専攻の学習・研究ばかりでなく、英語も中国語でも頑張るというような人ですね。それに、物怖じしないで様々なところに積極的に出て行ける人、元気があって活発な人。そんな人に来てほしいです。

