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Good Professor

今井 むつみ

今井 むつみ 教授
慶應義塾大学
環境情報学部

東京都出身。1989年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。’94年米ノースウェスタン大学心理学部大学院博士課程ph.D.取得。’97年慶應義塾大学環境情報学部(SFC)専任講師。’00年同助教授。’06年より現職。APA Dissertation Award(American Psycological Association 94年)・日本心理学会国際奨励賞(’07年)など受賞多数。主な著作に『レキシコンの構築:子どもはどのように語と概念を学んでいくのか』(岩波書店)『人が学ぶということ:認知学習論からの視点』(前著ともに共著・北樹出版)『ことばの学習のパラドックス』(共立出版)などがある。

今井先生が主宰する「今井むつみ研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imai/index.php?MUTSUMI%20IMAI%20LAB

ヒトの言語獲得過程に迫る認知科学による国際的研究

今井研究室のあるSFC「イオタ館」
今井研究室のあるSFC「イオタ館」
湘南キャンパスのシンボル「本館」
湘南キャンパスのシンボル「本館」

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC、神奈川県藤沢市)は、最先端のサイエンスやテクノロジー・デザインについて、学際的に研究・教育しているキャンパスとして知られる。今回ご紹介する同キャンパスの環境情報学部教授、今井むつみ先生に慶應義塾大学SFCの魅力から話を伺った。

「ここSFCは総合政策学部と環境情報学部の2学部からなりますが、両学部の講義や研究会を自由に履修できます(研究会については後述)。従来のタテ割り型の学部ですと、たとえば心理学科に入れば心理学についてだけ専門に学ぶことになります。ここではひとつの研究課題について、文理を融合させたいろんな視点から学ぶことができます。それが大きな魅力でしょうね」

SFCの学生たちは履修する科目を自ら選択してプログラムする。このとき明確な目的意識をもたずに安易な科目選択をしてしまうと、4年間学んでも何も身に付かないということにもなりかねない。

「SFCには多彩なメニューが用意されていますが、考えなしに面白そうな科目だけツマミ食い選択していますと、単位取得だけはクリアできるとしても、肝心の問題意識から遠ざかってしまうという落とし穴もあります。ですから、ここで何を学びたいのかを明確に意識して来ることに留意してほしいですね」

だからといって、あまり不安がる必要はないとも。SFCには「研究メンター制度」というものがあり、担当教員が学生の相談に親身になって逐一応じてくれるからだ。ぜひおそれずに慶應SFCに挑戦して、文理を融合させた最先端の研究に触れてほしいとも語る。

さて、今井先生ご自身の専門は「認知科学」と「教育心理学」である。まずは認知科学の研究からご説明いただいた。

「まず認知科学においては、どのように人は言語(母語)を学習していくのか、を主なテーマとして研究してきました。こうした研究では客観的に観察することが重要になります。まだ言語を習得していない乳児から4~5歳の幼児まで、それぞれの発達段階において周りの世界をどう認識し言語をどう理解しているのかを観察して研究していきます」

また最近では、人間の脳波の測定など脳科学の手法も取り入れ、ことばが脳でどのように処理されて理解されたり、学習されたりしているかの研究も始めているという。

ニッポン教育の閉塞感を打破する教育心理学の試み

慶大SFCキャンパス点描
慶大SFCキャンパス点描

こうした今井先生の事績で特筆すべきはその国際性だ。こうした研究をアメリカや中国・ドイツの研究者らとチームを組んで、発達や異言語との比較の視点からも共同研究してきた。

「それぞれの国の乳幼児にとって獲得すべき母語は違っています。多様な言語を獲得していく過程であっても、普遍的に共通するものもあります。たとえば、どの国の乳児も自分の母語を学習するため、かなり早い時期から脳を最適化させる工夫をしているのです。また母語の違いはあっても、その獲得過程の段階はどれも似ていることも分かってきました」

いずれも特定の母語についての研究だけでは発見できないことばかり。海外研究者との共同研究となればこそ、数々の大きな成果につなげてきた。そして、今井先生のもうひとつの専門は教育心理学である。

「小学校から始まるニッポンの学校教育は『教える』『教えられる』という関係で成り立っています。こうした、知識を一方的に教えられ詰め込まれるだけの教育では、教えられた知識を生徒が消化して、自分なりの知識を生み出すということができません。よく日本の学童は応用力が弱いなどと指摘されますが、その部分が軽視されているからだとも考えられます」

そこで今井先生らの研究グループでは、あるコミュニティースクールの協力を得て、生徒自身で新たな知識を生み出したり、持っている知識を実生活での問題に応用したり、自分で学習のしかたを学び取る力がつくカリキュラムを考え、実践実験をしている。

データに依拠して仮説検討する科学的な見方を身につけよう

慶大SFCキャンパス点描
慶大SFCキャンパス点描

これまで慶應義塾大学SFCでは、各教員がそれぞれ2つのプロジェクトを掲げ、学生は2年次からそのいずれかに参加する研究方式であった。これが’08年度から「研究会方式」に改められた。これは各教員がやはり2つの研究会テーマを掲げ、学生は2~3年次の2年間いずれかの研究会に参加し(本人が希望すれば1年次からの参加も可)、4年次の卒業プロジェクトにつなげていくという方式である。

こうして今井先生の研究会に参加している学部生は、例年総勢で10人前後。研究テーマは「言語と脳科学プロジェクト」と「教育プロジェクト」(英語を中心にした外国語教育・算数教育)――の2つだ。

「わたしの研究会も2つのテーマを立ててはいますが、両方のテーマをまとめてひとつの研究会としてやっています。これは教育に興味のある学生さんも、ヒトの脳の仕組みや働きなどの脳科学についても知っておいてほしいからです。逆に、脳科学を本格的に学ぼうとしている人にもその教育への応用を考えてほしいからです」

具体的な研究会の進行は、今井先生が選んだ専門書(原書)の全員での講読と、メンバーの学生たちがそれぞれに関心を寄せているテーマの先行研究の論文について、交代で紹介して全員で討議する2本立てで行なわれている。また希望すれば、コミュニティースクール活動や今井先生の実験研究への参加も可能だという。あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「心理学的なものの見方や考え方を身につけて欲しいですね。そうすることで、自分なりの見方・考え方ができるようになります。これらは社会に出てから大いに役立つスキルになるはずです。もうひとつ、社会人としての礼儀をわきまえ、人やコミュニティに対して思いやりのある心をもった人に育ってほしいとも思っています」

こんな生徒に来てほしい

大学は将来の就職のためのステップとしてのみ存在するわけではありません。自分の一生の方向について考える、動機付けのために存在するのが大学の本来の役割であるはずです。真の知識は、教師など人から与えられるものではなくて、自らつかみ取りにいくべきものです。そういう意識と認識のある方に来ていただきたいと思っています。

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