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AO・推薦入試対策 志望理由書編 【早稲田塾】

慶應義塾大学法学部FIT入試

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05年から始まった入試制度である。評定平均は「問わない」としているものの、傾向を探ると、高いに越したことはないようだ。これは「実はそれで選んでいる」という意味でなく、高校での学業充実がはかられていて、何らデメリットはないということ。また、試験結果のあらましが出る時期に高校の指定校推薦内定が決まってしまって、合格しても入れないなど季節性の問題がある。

FIT入試は、多量の書類を書き上げないと、一次選考で落とされてしまう過酷な制度である。まず「志望理由書」が約2000字課され「入学したら何を、どのように学び、また自分の夢をどう実現したいか」と細かい制約がある上に、別の書類で「人間的成長」「関心を抱いている事柄」など他に答えるべき指摘も多い。最初にスケジュール確認から入る本格的対策が断じて必要。分量が多く、時間がかかる割には提出期限が早く設定されており、段取りをきちんとつけるのも大きい。「最初は工程表の作成」である。

会場試験におけるプレゼン・面接・グループディスカッションなどは、訓練しておかないと手に負えない。逆にいえば、備えさえあれば大きく差をつけることができよう。普段から、ただ一方的に話すだけではなく、相手の意見を聞きつつ持論を納得させる、受け答えの素早さを身につけてほしい

さて。FIT入試で法律学科を志望する者に顕著にみられる傾向として、「将来は法曹」とする、がある。法曹とは司法試験を突破して、俗に法曹三者と呼ばれる裁判官・検察官・弁護士をさす用語だ。なかでも弁護士を志望すると書く人が多い。しかし、法律学科は別に法曹養成をもっぱらにしているわけではない。したがって、深く法曹を志望していないのに、そう書かなければ採点者の印象が薄れるなどといった発想は、まったくの勘違いである。まして「法学部FIT」で「法律学科FIT」ではない。法学部のなかに法律と政治の両学科がある、慶應義塾大学で学ぶ意味を問われているのだ。

法律学科で学ぶことの、最も広い概念は「リーガル・マインド」であろう。言葉の解釈が難しい言葉であるが、あえてまとめれば「社会で起きるさまざまな出来事に対して法的な思考ができる能力」である。法的な思考とは、法律の条文や判例などを参照しつつも、基本的には権利や義務といった正当な価値観に基づいて、論理的一貫性をもった判断ができる思考回路とみていい。

自分がすでにその持ち主であり、あるいはその素養があり、なおかつさらに磨きをかけたいという人にとって法律学は有用であり、法曹が自己目的化した専門学校で学ぶようなスタンスは、かえって採点者に不信感をもたれる危険がある。

もちろん、本心から法曹を目指すならば大いに書いて結構だ。だが、「本心か?」と疑わざるをえない志望理由書が、多数見受けられるのも事実。その理由は、相当程度に勉強不足だからである。

法曹は業務独占資格である。したがって、弁護士ならば「弁護士にしかできないこと」がある。それがやりたいから弁護士を目指す、という方向性がまったく見受けられないと、弁護士になりたい動機が薄れるか、疑われるのは当然である。こうした「にしかできないこと」を把握せずに、適当な志望理由を並べてしまう人が目立つ。その程度のことは百科事典程度で十分にわかるので調べておこう。

また、新司法試験の知識も不可欠だ。現時点では、原則として法科大学院を修了しないと法曹の国家試験受験資格が得られない。ただし、自分が進みたい大学にある法科大学院に無条件で進めるわけではなく、また法科大学院は、法学部ないしは法律学科出身者の受け皿でもない。なぜ新司法試験が始まったのかという経緯をしっかり調べておこう。これも簡単にできる行為だ。

法律・政治の領域で、本来は中学の公民の教科書で十分に間に合う程度の知識さえ、すっかり忘れてしまったような、本概念を踏み外した志望理由書があるのも事実である。これでは話にならない
いくらか極端にいおう。現在の日本では原則自由。何をやってもいい。ただし公共の福祉に反するなどの問題がある場合には、法で制約や「罪と罰」を定めておこうというのが発想の原点にある。現実にそう運用されているかどうかは別にして、出発点はそのあたり。

ところが多くの志望者は、まず法律の枠があって、その範囲内で人は自由を有するとの意味合いで書いている。それはむしろ旧憲法(大日本帝国憲法)の原則に近い。三権分立の意味や意義、法治とは何かというごく基本的な理解が欠落していてはFITするわけもない

繰り返す。中学で学んだ程度でいいから公民の教科書を引っ張り出すぐらいしておこう

また、せめて自分から学びたいと書いたジャンルに関しては、これまた百科事典程度は調べる努力をしよう。例えば「国際法を学びたい」と書いておいて、「国際法とは何か」と質問されて答えられないのでは、つらすぎる。

こうした「勉強」は、法治国家に暮らす者として知っていて当然の常識のはずだ。常識を知ることを負担と考えるならば、どの学部であれ大学に行く資格さえ疑わしい。面倒くさいなどと夢にも感じないように。どうしても面倒な人は、元々リーガル・マインドや政治学への興味が弱いか、欠如しているので出願はやめた方がいい。

著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。

※「志望理由書対策入門」の内容は、早稲田塾生専用サイト「マイページ」にて15回分早く連載されています

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