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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

ちょっと画期的な、早稲田大学の推薦制度

マイスターです。

日本には、「スポーツ推薦制度」を持つ大学が少なくありません。
各種のスポーツでめざましい成績を残した高校生を対象にするものです。
例えば、陸上競技や野球、サッカーなどの人気競技では、こういったスポーツ推薦入学の学生が比較的多いように思います。

「大学スポーツ」という文化を育み、また優れたプロ選手のタマゴを養成するという上では、この制度には評価できる点があります。
しかし一方で、この制度に対する批判もないわけではありません。



例えば入学後はスポーツの練習などが優先され、学業が二の次にされることがあるという点。
大学によっても違うのでしょうが、「スポーツ推薦生だ」というだけで、ロクに授業に出なくても単位を与え、他の学生と同じように卒業させる大学もあると聞きます。
スポーツ系の学部学科ならまだいいのですが、そういった学部を持たない大学だと「経済学部卒業」みたいなことになる場合もあります。
思わず、「学位の意味って何だろう?」と考えてしまうケースです。

こういった大学だと、入学のときも「スポーツの成績」ばかりが重視され、学びに対する意欲や学力はあまり問われないのだとか。
こうなると、何も大学でなくても、実業団やクラブチームでいいじゃないか、という気もしてきます。

アメリカの大学にもスポーツに力を入れているところはたくさんありますが、それはアメリカ式のリベラルアーツ教育が、「バランスのとれた社会リーダーの育成」を目的としているから。知力だけでなく、人格的、体力的にも優れた人間を育てることこそが、大学の役割だというわけです。
「スポーツだけ」で入学、卒業できてしまう日本の一部の大学とは、むしろ逆の発想かも知れません。

しかし、大学にとって「学生」選手の活躍は大きなPR効果を生むので、なかなか日本の大学から、スポーツ推薦制度がなくなる気配はありません。

それに、あながち悪い部分ばかりでもないのです。
例えば、何かの分野で活躍している学生がそばにいることで、「自分もがんばろう」と刺激を受ける学生もいるでしょう。
これは、大学にとっても、周囲の学生にとっても、良いことです。

また、スポーツ推薦生は将来、スポーツを通じて何らかの「指導者」になる可能性の高い学生達です。そんな彼らが、十分ではないにせよ、大学の学びに触れることには大きな意味があります。
もしスポーツ推薦制度がなかったら、多忙な選手生活の中では、それこそ一度も高等教育に触れる機会が得られないかも知れません。

でも、だからと言って、なぁ。
うーん……。


……などとマイスターは以前から考えていたのですが、さきほど、ちょっと面白いリリースを見つけました。


【今日の大学関連ニュース】
■「プレスリリース(2008年1月25日):早稲田大学人間科学部eスクールにJリーグ所属選手9人が合格」(Jリーグ)

2008年度早稲田大学人間科学部eスクール(通信教育課程)の特別選抜入学試験に、Jリーグから9名の選手が合格しました。
早稲田大学人間科学部eスクールに、2007年よりスポーツ分野の特別推薦枠が設けられ、2008年度はJリーグ推薦として9名の選手が応募、全員の合格が決定したものです。
合格選手は、今後Jリーグ選手としてプレーを続けながら、通信課程で単位を取得します。

(上記記事より)

Jリーグ公式サイトで見つけたリリースです。
上記のリリースでは、合格した学科別に、各選手の氏名と所属チームが発表されています。

スポーツに疎いマイスター。
さきほど、おそらく生まれて初めてJリーグのwebサイトにアクセスしたのですが、Jリーグが公式サイトでこんな発表をしているとは、知りませんでした。

というか、早稲田大学人間科学部eスクールのことは知っていたのですが、こんな推薦制度を持っているとは、不覚にも存じ上げませんでした。

ちなみに、一年前にも同様のリリースがあったようです。

■「プレスリリース(2006年12月22日):早稲田大学人間科学部eスクールにJリーグ所属選手7人が合格」(Jリーグ)

マイスターが思うに、この推薦制度は、冒頭で申し上げたような従来からあるものとは、意味合いが大きく異なるのではないでしょうか。

既にプロとして活躍している選手に、選手活動をしながら高等教育を受ける道を開く、画期的な仕組みなんじゃないかとマイスターは思います。


○インターネットで学ぶ「e-learning」ですから、忙しい練習の合間でも受講することができます。

○スポーツ選手用の推薦といっても、別に大学の選手としてスポーツ活動をしろというわけではありませんから、本人が本業の選手活動とちゃんと両立できればいいわけです。

○しかも人間科学部の授業ですから、スポーツ選手として自分を磨く上でも、あるいは将来トレーナーや指導者、教育者として活動される上でも、役に立つものが多いはず。比較的、スポーツ選手として積み重ねていくキャリアに関連が深い領域でしょう。


上記のような環境が整えられているのですから、学びに魅力を感じる選手は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

最終的にきちんと学位に値する学びを終えられるのであれば、推薦制度自体にはあまり問題はないと思います。
むしろ、ここで得た学びをもとに、選手達が社会全体に対して将来、貢献されていくことのインパクトを考えれば、私たちのような一般生活者にとっても、メリットがあることではないかと思えます。

必要な方々に、必要な教育を届ける。
そのための推薦制度として、これから機能していくことが期待できるのではないかと、個人的には思うのです。


ちなみに早稲田大学の取り組みに先駆けて、法政大学キャリアデザイン学部も、Jリーグと推薦入学協定を結んでいました。

■「Jリーグキャリアサポートセンター 初の推薦入学協定を法政大学キャリアデザイン学部と締結」(Jリーグ)

こちらは、「Jリーグでの経験を、社会の他の場面で活かす方法を学ぶ」という感じに近いのかな、とマイスターは感じました。


Jリーグは、こういった大学との連携を通じて、

「プロとして活躍した選手達がその後、社会に対してどう影響を与えていくのか」

「サッカーというスポーツを、社会にどう役立てていくか」

……といったミッションに取り組んでいるのかな、と思います。

プロスポーツというものの機能、スポーツ選手の社会的な役割ということを考えた上での推薦制度なのではないでしょうか。


他のスポーツで同様の取り組みが行われているかどうかマイスターは存じ上げませんが、とりあえず、サッカーを見る目はちょっと変わりそうです。

将来、どのような成果につながっていくか、楽しみです。


以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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