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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

「共同学部」第一号? 大阪の3大学、生命科学系の学部設置へ

マイスターです。

昨年11月、ある報道が大学業界で話題になりました。

「複数の大学が、共同で学部や大学院の研究科を設置することを認める」

という内容の省令改正案を、文部科学省が提出する方針だというものです。

マイスターはこのニュースを聞いたとき、大学業界に刺激を与える面白い取り組みだなと思ったのですが、どうやらさっそく、その実現を目指す大学混成チームの第一号が現れたようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「3大学が共同学部設置へ 関大・大阪医科大・大阪薬科大」(Asahi.com)

関西大、大阪医科大、大阪薬科大は9日、3大学共同で、生命科学系の新学部を2010年4月にも大阪府高槻市の大阪医科大のキャンパスに開設すると発表した。「共同学部」は、文部科学省が「各大学の資源を有効活用するため」として、08年度中にも省令改正して設置を可能にする予定。改正を見込んで計画を公表するのは全国初という。

新学部の定員は1学年約200人で、医学、工学、薬学を融合した「生命医科学部」「生命健康学部」などの名称を検討。生命医科、生命薬科、生命情報科、医療経営、看護などの学科やコースを想定しているという。キャンパス内に新校舎を建てる。3大学が教員や設備、費用を出し合い共同で運営する。

(上記記事より)

そんなわけで、3大学による新学部が、「共同学部」の第一号に名乗りを上げました。
……といっても、実際にはまだ文科省の「共同学部」改正案は可決されていないのですから、今回の発表は、かなり先手を打っているという印象です。
おそらく、新しい取り組みをいち早く発表することで注目度を高めようという意図があるのでしょう。


複数大学が共同で設置する学部というのは、従来の大学観を大きく覆す試みです。

報道によれば、「学生は3大学に重複して在籍し、卒業時に3大学連名の学位を得ることになる」見込みだとのこと。

この学部に入学すると、母校が一気に3つもできるわけですね。
就職活動の時、「どこ大学の学生さん?」と聞かれたら、

「はい、関西大学と大阪医科大学、それに大阪薬科大学の学生です」

……と答えることになります。
最初のうちは、きっと面接官のアタマに「?」マークが浮かぶことでしょう。


ところでこの試み、受験生はもちろんですが、他大学の関係者や高校・予備校の進路指導担当者にも、けっこう衝撃を与えるのではないでしょうか。

ちょっと話はそれますが、残念ながら、高校生への進学指導の現場では未だに、

「教育の善し悪しにかかわらず、とりあえず世間的に聞こえの良い大学を生徒に薦める」

という風潮が、かなり幅をきかせているように思います。
(その象徴が、偏差値によって難易度順に大学名を上から並べた、あの表です)

確かに、歴史があって名の知られた大学には、優れた研究者もいるでしょう。大学全体を見れば、社会で活躍している卒業生も多いかも知れません。
でも実際には、同じ大学でも学部ごとに教育・研究の実力は違います。ある学部は素晴らしい教育を行っていても、他の学部は平均的という大学だってあるでしょう。
あまり名は知れていなくても、実は手間暇かけて学生を育て、社会から信頼されるような卒業生を毎年送り出している大学だってあります。

そんな違いをちゃんと調べずに、イメージだけで「○○大学は良い大学だぞ」と進路指導を行っている教育関係者って、実は高校にも少なくないように思います。
(逆に言うと、それくらい大学のブランドイメージは影響力を持っているってことですね)

でもマイスターとしては、やっぱり受験生にはその「学部」の、できれば「学科」までの実力を、少しでも調べた上で進学先を選んで欲しいと願うのです。


で、話は戻るのですが、今回の3大学による共同学部というのは、ある意味、大学名から自由になった教育研究機関だと言えるのではないでしょうか。
(もちろん3大学のブランドイメージと完全には切り離されないでしょうが、それでも大学名の語られ方は、従来の大学に比べたらかなり薄まると思います)
この学部を目にした進路指導担当者の方々が、高校生達にどう語るのか、マイスターは結構、楽しみなんです。

「先生、この3大学の新しい学部って、他の大学と比べてどうなの? 良いの?」……と生徒に聞かれたとき、説得力を持って回答できる教育関係者が、果たしてどのくらいいるでしょうか。
こういった取り組みは、進路指導の現場に、良い意味での混乱を巻き起こしてくれるんじゃないかなーと、少し期待してしまうのです。

せっかくの野心的な取り組みなのですから、この共同学部の設立に関わる関係者の方々にはぜひ、漠然としたイメージPRだけではなく、受験生に対して真っ正面からこの学部の学問的な実力や可能性を伝えるような広報を行って欲しいと個人的には思います。
3大学が連携することによって実現できる、充実した教育研究設備、多様な教員、学問的なひろがりなどなど、受験生に対して打ち出せる魅力はたくさんあるでしょう。
どうぞ、共同することの意義を高校生に、そして社会に示してあげてください。


最後にもうひとつだけ。
大学の運営という観点では、共同学部についてはけっこう、考えなければならない課題も残っていそうです。

例えば新学部の受験生があまり集まらなかったり、評判が悪かったりした場合、どこの誰がその責任をとるのかな、とか。
大学内の責任体制というのは、それでなくても曖昧です。学部長はしょっちゅう代わるし、受験生が集まらなくても「まぁ、少子化だから」と言い逃れてしまえたりして、誰にどんな管理者責任があるのか、明確でないことも少なくありません。
普通の大学ですらそうなのに、3大学から教員を(そしておそらく職員も)出し合って運営する共同学部。品質管理の責任体制をしっかり構築しておかないと、せっかくの長所を生かせないままになってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

でも、「最初」の取り組みが成功すれば、後に続こうとするところも増えるでしょう。
というわけで関西大学、大阪医科大学・大阪薬科大学の皆様にはぜひ、こういった課題をひとつずつ乗り越え、高等教育の世界に影響を与えるような良質な教育・研究機関を実現させていただきたいなと、マイスターは思うのです。

以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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