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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

「最終講義」が伝える想い

マイスターです。

最近、読んだ本があります。

ハーバード大学ビジネススクールではどの授業でも、最終講義で教員が、これから世界に羽ばたく卒業生に向けて、感動的なエピソードとともに特別な「贈る言葉」を話す伝統があるそうです。


自らの体験に根ざした、飾らない言葉。
それは、例えば教授が企業の経営者だったときにひとりの従業員と向き合って考えたことだったり、九死に一生を得た体験から学んだことだったり、自分の子供のとりとめのない一言をきっかけにずっと考え続けている問いだったりします。

いずれも、今の自分を支えている大切なエピソード。内容は人それぞれですが、それらを通じて伝えようとしていることはただひとつ、「リーダーのあるべき姿」なのです。
高校生にも大学生にも、そして社会人にも、オススメの本です。


さて、日本の大学でも、講義の最後に、こういったエピソードを語る方はいます。

マイスターが学生だったときにも、講義の最終回に、学生に対して自分のことを率直に語ってくれた先生が、何人かいらっしゃいました。

自分が学生時代にどんなことを考え、悩んでいたか。
なぜこの研究テーマに一生かけて取り組もうと思ったのか。
学生達の目を見ながら、そんな話を語ってくれた先生の話は、やはり今でも強く印象に残っています。
その時に、心動かされるものがあったからでしょう。

(特に記憶に残っているのは、文学部出身なのに、火葬場建築のことを研究され、工学博士を取得された先生のお話。誰もやりたがらなかったテーマを選んだ経緯を、自分の体験をもとに話され、感動しました)

でも、こうした先生はおそらく少数派。
学問分野や科目にもよるでしょうが、多くの授業は、テストのための伝達事項と、せいぜい30秒程度の「お疲れ様でした」みたいなメッセージで終わります。

同じ先生がいくつも講義を持っていたりするので、エピソードを話した次の学期の授業でまた同じ学生を持ってしまうと気まずいからでしょうか。
あるいは、「自分のことを話すなんて、照れくさいし、ガラじゃない」といった、シャイな方が多いからでしょうか。
実際には、学生はけっこうそういった話を聞きたがっていると思うのですが。


でも、そんな先生達が、自分の半生を蕩々と語ってくれる授業があります。

それは、退職・退官前に行う、最後の講義。
正真正銘の、「最終講義」です。


今はちょうど、最終講義の案内がされる季節です。

■「最終講義」(神戸大学)

■「『発想は大胆に』と激励、ノーベル賞候補者が最終講義」(MSN産経ニュース)

■「地域 : 信大の野口教授 きょう23日最終講義」(長野日報)

■「知財法の権威、東大の中山信弘教授が最終講義」(ITpro)

■「『沖縄に育てられた』 高嶋教授が最終講義」(琉球新報)

■「古川康一教授 ×大岩元教授 合同最終講義・演奏会のお知らせ」(慶應義塾大学)

■「最終講義のご案内 (日程確定版)」(岐阜大学)

■「平成19年度最終講義について」(豊橋技術科学大学)

■「環境科学研究科:最終講義のお知らせ」(東北大学)

■「最終講義のお知らせ」(福島大学)

■「07年度退職教員の最終講義のお知らせ」(山形大学)

■「今年度退職される教員の最終講義に関する情報を掲載しています」(京都大学総合人間学部 京都大学大学院人間・環境学研究科)

上記は、「最終講義」と検索して出てきた中の、ほんの一例に過ぎません。
多くの大学が、教員の最終講義の情報を、webサイトなどで発信しています。

というのも、最終講義というのは、学生だけではなく、一般の方の聴講も可能であることが多いのです。

多いのはやはり、卒業生。
その先生に直接お世話になった教え子達が、恩師の最後の晴れ舞台に集まり、祝ったり、なごり惜しんだり、感謝の言葉を伝えたりするのですね。

マイスターが見た中で、忘れられないのは、何十年も前に卒業した学生が同窓会からの連絡を聞いて恩師の最終講義に出席していたシーンです。
講義終了後、「先生、長い間、おつかれさまでした」と声をかけられたその先生。「お~! なんだ、来たのかよ~!」とか言いながら、めちゃめちゃ嬉しそうでした。
普段はどちらかというと仏頂面の先生だったので、本当に嬉しかったのだろうなぁと想像し、マイスターも感動しました。
毎年、大学キャンパスのどこかで必ず見られるであろう風景ですが、学生の卒業生と並んで、素敵な一幕です。


研究者・教育者として半生を過ごしてきた大学教員にとって、自分の教員生活の最後を締めくくる最終講義は、特別な意味を持っています。

研究者としての成果を総括し、専門分野についての知見をまとめる場であると同時に、
教員人生を振り返り、学問と自分との関わりや、自分の半生を語る場でもあるのです。

学生やかつての教え子達を前に、自分はこのように生きてきたと語り、「後は君たちに任せた」というメッセージを伝える。
最後にして、最も重く受け手の心に残る、教育。それが、最終講義です。

(よろしければ、上でご紹介した最終講義の案内のリンク先をいくつか見てみてください。講義のタイトルに、各教員の思いが込められています)


最終講義というのは、基本的には、卒業生を含めた学園関係者のためのものですが、上述した通り、一般市民の参加を認めている例も多いです。

ですので、例えば、高校生が聴講することだって可能です。
平日の早い時間だと、残念ながら高校の授業時間と重なってしまうこともあるでしょうが、土日や夕方以降の講義なら大丈夫でしょう。

最終講義は、教員の研究の総括をする場ですので、ガイダンスとは異なります。ですから、必ずしも、高校生が聞いて楽しい授業ではないかも知れません。
ただそれでも、大学教授がどんな想いで研究や教育をしているかということや、研究室のメンバー達の関係などは、なんとなく伝わってくると思います。
それだけでも、その大学や、その学問に対して興味を持つきっかけにはなるでしょう。

というわけで、可能であれば、受験生にも最終講義の聴講をオススメします。


なお、最終講義をデジタルアーカイブ化し、web等で公開している大学もあります。

■「東大.TV:岡部洋一東京大学名誉教授の最終講義」(東京大学)

■「最終講義録」(慶應義塾大学湘南藤沢学会)

これらの場合は、自宅でも受講できますね。
※これですと残念ながら教員と教え子のやりとりなどは映りませんが、肝心の講義内容は分かります。

このように、最終講義を、さらに先の世代への教育に活用することも、場合によってはできるのかな、なんて思うのですが、いかがでしょうか。


以上、「最終講義」に関する案内をweb上で見つけ、こんなことを考えた、マイスターでした。


※皆さんが受講された中で、「この最終講義が心に残っている」という例がありましたら、コメント欄で教えてください。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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