1. ホーム
  2. 大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】
  3. 「就職力」って模試で測れるの?

大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

「就職力」って模試で測れるの?

マイスターです。

就職活動関連の話題を調べている中で、こんなものを見つけました。



【今日の大学関連ニュース】
■「日経就職ナビ2010:夏の全国就職力模試」(日経 就職Navi)

就職採用試験でよく出題される「一般常識」や「時事」の問題、さらに就職活動や仕事の場で問われる「マナー」と「社会人基礎力」を総合したものが、「就職力模試」です。

(上記ページより)

そんなわけで、「就職力」を「全国」で判定する模試が登場。

なんとなく、自己発見のきっかけにしてほしいとか、そんな意図があるのだろうとは思います。

その目的は良いのですが、模試という手段が適切なのかどうか。
模試というと、点数がついて、他人との比較ができるという印象を持ちますが、就職ってそういうものなのでしょうか。

そもそも、「就職力」というものを、模試で測れるくらいにまで一般化できるのか、という疑問が浮かびます。

就職というのは、企業と働き手のマッチングに過ぎません。
同じ業界・業種であっても、企業によって仕事の内容や社風は違うわけで、ある企業に向いている人が他の企業にも向いているとは限りません。
そんな中、果たして、「就職力」なんてものが定義できるものなのでしょうか?


この模試が何をもって「就職力」を測るかというと、「一般常識」、「時事」、「マナー」、そして「社会人基礎力」です。
なんとなく、「社会人基礎力」や「学士力」といった概念が登場したときに、そのうちこういった使い方がされるんじゃないかな~……と思っていた人もいたはず。

企業が求める能力として、今、最も注目を集めているのが「社会人基礎力」。社会人基礎力とは、働く上で必要な能力を経済産業省が中心になってまとめたもの。具体的には、「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」として、

①自ら積極的に行動を起こし、失敗しても粘り強く取り組む「前に踏み出す力(アクション)」
②問題を見つけて、解決に向けて方法を考える「考え抜く力(シンキング)」
③いろいろな人々と一緒に目標に向けて協力する「チームで働く力(チームワーク)」

の3つの能力で構成される。
そして、それぞれの能力を12要素に分類し、その要素を具体例で明示している(下表参照)。経産省が実施した企業アンケートによると、9割以上の企業が社会人基礎力を採用時のポイントになると答えているのだ。自分の長所や能力を把握する参考にしてみよう。

(上記記事より)

「一般常識」、「時事」、「マナー」、は、採点できなくもないかも知れませんが、こういった概念で定義される「社会人基礎力」を模試でどのように測るのか、気になるところです。

百歩譲って、何らかの評価軸を設定し、社会人基礎力が採点できたとしましょう。
「一般常識」、「時事」、「マナー」、「社会人基礎力」の4つで、一定水準以上のポイントを獲得したとしましょう。その場合、この模試に従えば、「就職力が高い」ということになるのだと思います。
しかし、その受験者が、特定企業に対して就職力を発揮し、内定をとってこれるのかというと、それはまた別の問題であると思います。

「一般常識」、「時事」、「マナー」、「社会人基礎力」というのは、確かにどれもそれなりに大事だと思いますが、面接官が「こんな学生に来て欲しいなぁ」と思うかどうかのポイントは、必ずしもこの4つによってはいません。これは社会人1年目から採用の面接に関わってきたマイスターの実感です。

模試で測れるのは、絶対の正解があるものだけです。「正解」がある4つの力を足し合わせたところで、本来測定できるものではない「就職」可能性の測定にはつながらないんじゃないのかな、という気がします。

こういった模試があることで、みんなが身につけなければならない「就職力」があり、就職に「正解」があるのだと、学生が誤解するのではないかと心配です。
あらゆる企業に対応できる就職力を備えた人間なんて本当は存在しないのに、模試の結果を受けて「就職力」を磨き、内定を得て、就職後にどこかでひずみが生じる、なんてことにならないでしょうか。

企業の側は、このような方法で「就職力」を磨いた学生を採用したいと思うのでしょうか?


そもそも「就職力」という発想自体に、どうもマイスターは、不穏な空気を感じてしまいます。
「力」というのは、学生が企業の側に一方的にキャッチアップしなければならない、という考え方でしょう。
それでなくても、多様な学生を強制的に一色に染め上げるニッポン企業の「新卒一斉採用」に対して不信感を持っているのに、その上、「就職力」……うーむ。

しかも、上記の日経ナビのサイトには、

一般常識・時事問題で苦戦した人は、『一般常識の完璧対策』で対策を。
マナーに自信がない人は、日経就職ナビの『先輩500人が迷った就活マナー』を参考にしよう (上記ページより)

……なんて記述があって、本当のねらいはここでしょう、と思ってしまうわけです。

日本の就職産業は、「こうでなければ採用(就職)できない!」というルールやシステムを自ら作り出し、そのルールの中で学生や企業に競わせる、という方法で成長してきたと思います。
この「就職力」ってのも、そういった企業が作ろうとしている新しいルールの一つなんじゃないでしょうか。


……と、日本の就職活動に対して不信感を抱いているマイスターは、ついついこんな、やさぐれた目で見てしまうのですが、大学のキャリアセンターの皆様は、どうお考えなのでしょうか。

以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

※ブログの内容に関するご意見・ご感想やお問い合わせ等は、以下のメールアドレスにご送付ください。 またこのブログでは、全国の大学関係者の皆様のための話題をご紹介しています。世の中に知って欲しい取り組み、各種イベントなどの情報もお待ちしております。

資料請求・各種お申込み・お問い合わせはコミュニケーションセンターへ

0120-173-573

月~土 / 11:00~20:00 日・祝 / 10:00~18:00
携帯電話PHSからもご利用頂けます。

  • 資料請求
  • 無料体験
校舎一覧