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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

京都教育大学の事件報道:大学とメディア、双方のあり方に疑問

マイスターです。

その組織の本当の実力や、トップの信念というものは、何か重大な問題が起きたときにこそ、問われる。
以前どこかで聞いた言葉なのですが、これに同意される方は多いと思います。

例えば学校で重大な事件が起きたり、不正が発覚したりするケースは少なくありません。
そんな場合、トップが学内外にどのような言葉を伝えるかは、とても重要です。

しかし言うは易く行うは難しで、これが非常に難しい。
ケースによって対応は異なり、絶対の正解がないため、突然殺到するメディアに対し、「とりあえずこう言っておけばいいだろう」といった、紋切り型の謝罪で対応してしまいがちです。

そんな「難しさ」を改めて感じさせる例が、最近もありました。



【今日の大学関連ニュース】
■「京都教育大学集団準婦女暴行事件 大学側、3月3日の時点で把握するも公表せず」(FNNニュース・動画有り)

京都教育大学の学生6人が、集団準婦女暴行の疑いで逮捕された事件で、大学側は、3月3日の時点で把握していたが、女子大生が刑事告訴するまで公表しなかったことがわかった。
(略)大学側は、会見で「大学として、深くおわびを申し上げたいと思います。誠に申し訳ございませんでした」と謝罪した。
また大学側は、会見で「(どうして今まで発表しなかった?)教育的な配慮を優先した」と話し、大学側は3月3日の時点で把握していたとしているが、女子学生が刑事告訴する4月まで、警察にも届けず、公表もしなかった。
大学側は、会見で「公然わいせつ行為として、本学の学生として本分を守らなかった。(強制わいせつじゃないのか?)われわれは(公然わいせつ)、そう思っております」と話した。
調べに対し、竹田悟史容疑者(25)は容疑を認めていて、ほかの5人は「合意のうえだった」と容疑を否認している。
大学側は今も、公然わいせつと認識しているという。

(上記記事より)

京都教育大学の学生が起こした事件については、既に様々なメディアで取り上げられていますので、事件内容の詳細などは省略させていただきます。
事件が報道通りならとんでもない話で、犯行を起こしたグループに対し情状酌量の余地もないと個人的には思いますが、そのあたりの解明や処罰は、現時点では警察や司法にお任せすればいいでしょう。

ここでは、大学側の「対応」や、関連するメディアの報道の仕方に注目したいと思います。
というのも今回の事件は、事件の内容もさることながら、「大学側の対応」により強い批判が集まっているようなのです。

上記の記事にあるように、事件が起きたことを知りながら、学内での処分に留め、警察に届けなかった点。その理由を聞かれても、「教育的配慮」を繰り返すだけだという点が、様々なところで厳しく批判されています。

京都教育大生6人が女子学生に集団で性的暴行を加えたとして逮捕された事件で、大学が女子学生側から被害の連絡を受けながら警察に通報しなかったことについて、塩谷立文部科学相は2日の閣議後会見で「大変問題だと思う。訴えがあったらいち早く警察に知らせるのが大事だ」と批判した。

塩谷文科相は「事件は誠に遺憾で驚いている」とした上で、大学側が「教育的配慮」を理由に学内調査結果などの説明を拒否したことについては「捜査が進んでいる段階なので公表を控えたというのはあるだろうが、逮捕されても明確にしないのはどういうことなのか疑問。しっかり調査し、指導しなければならない」と話した。

「集団準強姦:「大変問題」文科相、京都教育大の対応批判」(毎日jp)記事より)
京都教育大の男子学生6人が、コンパで酒に酔った女子大生を暴行したとして集団準強姦(ごうかん)容疑で逮捕された事件で、1日に行われた同大学・寺田光世学長(67)の会見内容に抗議する電話が2日、同大学に殺到した。職員4、5人で対応に当たったが電話は鳴り続け、事件の反響の大きさを物語った。

他部署まで 午前8時30分から夕方まで、京都教育大学生課の電話は鳴り続けた。その内容だが、逮捕された男子学生らに対するものよりも、1日に行われた寺田学長の会見に対してのものが多かったという。学長は会見で事件を「卑劣極まりない」としたものの、警察に通報しなかったことについて「教育的配慮」という言葉を繰り返すのみ。報道陣との押し問答となった会見は、約4時間に及んだ。

同課によると、この日かかってきた抗議電話の多くは会見に対して「納得がいかない」「意味がよく分からなかった」というもので、同課に用意された4、5台の電話だけでは追いつかず、他の部署にかかってきたものもあったという。

「京教大学長 『教育的配慮』に抗議殺到…男子学生集団暴行事件」(読売オンライン)記事より)
大学側の対応も批判を浴びている。被害者から相談があり、学内調査で学生を処分したものの、警察には通報せず、公表もしなかった。女子学生は京都府警に告訴していた。

記者会見で大学側は「教育的配慮を優先した」と弁明したが、事件を軽視したと言わざるを得ない。酔った女性を集団で乱暴する行為はもっとも卑劣な犯罪だ。

大学側は「合意の有無が判断できなかった」などとし「公然わいせつ事件」として処理していたとみられるが、集団強姦を「合意」する女性などいない。事件を隠すような対応も言語道断だ。

「【主張】集団婦女暴行 教師の「卵」とは思えない」(MSN産経ニュース)記事より)

この通り、文部科学大臣から一般生活者の方々、メディアの社説まで、大学の対応に問題があったという認識が広がっている様子。

「大学は事件を隠そうとしている」
「大学は事件を軽視している」

……といった印象を持っている方が多いようです。

両方とも正解かもしれません。あるいは、「責任持ってこうした事件を処理する部署やスタッフがおらず、適当に数人で相談などしているうちに、自然に流れた」という要因もあるかもしれません。

そしてもちろん、本当に「教育的配慮」もあったのかもしれません。
まだ報道はされていないけれど、関係各所から話を聞き取った結果、警察も知らない様々な事情を知り、それもふまえて「教育的配慮」を繰り返している……という可能性もあります。
ですから、教育者としての対応が良かったか悪かったかというのは、マイスターには正直、まだよくわかりません。

ただ現在のところ、結果的には、大学の対応は全部裏目に出ているようにも思えます。

また、国立大学法人の教職員のような「みなし公務員」は、こうした事態を告発しなければならないという「義務」があるという話も聞きます。だとしたら、教育的配慮以前に、そもそも公務を扱ういちスタッフとしての基本ルールを守っていなかったことになります。
(マイスターはこのあたりの法律に詳しくないので、ご存じの方は教えてください)

経緯の説明も、曖昧な点は多いです。

府警や同大学によると、事件は2月25日に発生し、大学側は3月3日、被害者の女子学生から相談を受けて調査委員会を設置。同24日、女子学生の保護者に結果を説明し、31日に6人を無期限停学処分にした。

しかし、その後も大学から府警には通報せず、保護者が3月下旬に通報。大学側は6人が逮捕された1日の記者会見で、通報しなかった理由として「教育的配慮」などと釈明していた。

塩谷文科相は2日の閣議後会見で、大学側の対応について「大変問題だった。訴えがあったらいち早く警察に知らせることが大事。もっと早くやるべきだった」と批判。「教員養成を使命とする大学でこういう事件が起きたのは誠に遺憾」とし、会見での大学側の説明について「疑問があり、真意をしっかり調査して指導したい」と話した。

これに対し、大学側は産経新聞の取材に、被害者側が3月に通報したことを挙げて「大学側が改めて通報する必要はないと判断した。あとは警察に捜査を任せられると思った」と主張。

「京都教育大生準強姦事件、対応めぐり文科相と大学が対立」(MSN産経ニュース)記事より)

「(被害者が自分で通報したから)大学側が改めて通報する必要はないと判断した」のか、それとも「教育的配慮」で通報を敢えてしなかったのか。
最初はどう考えていたのか。学内では、どんな対応をするという結論が出されていたのか。
このあたりが、上記のやりとりからは、いまひとつわかりません。

いずれにしても、どういった点が「教育的配慮」なのかを、もうちょっと詳しく説明された方が良かったのだろうと思います。
そうしないと、「教育的配慮」が、あらゆる批判をかわすための便利な紋切り型フレーズとして使われてしまっているという疑惑が残ってしまいます。


ところでマイスターは、今回の事件で、もう一つ気になったことがありました。

京都教育大生6人が集団準強姦(ごうかん)容疑で逮捕された女子学生への暴行事件について、文部科学省の銭谷真美事務次官は1日の記者会見で「教員養成を使命とする国立大でこのような事件が起き、驚きと怒りを禁じ得ない」と語った。「大学には二度と起きないよう努めてもらいたい」と述べ、事件への対応や教育体制を検証するよう求める考えを明らかにした。

「『怒り禁じ得ない』=京都教育大生の集団暴行事件-文科次官」(時事ドットコム)記事より。強調部分はマイスターによる)

事件が報道の通りだったとして、学生達が犯行を起こしたのは、果たして大学の教育が不十分だったからなのでしょうか?

一連の報道を見ていると、

「教員養成を使命とする大学でこんなことが起きた」
→「大学の責任は大きい」

……という論理で大学の責任を指摘しているメディアが少なくないようです。
じゃあ、教育養成系でなかったら、別に良かったのでしょうか。

教員志望者であろうとなかろうと、今回のような犯罪をしてはいけません。
そして、「犯罪をしてはいけない」というのは、国民が共通して知っておくべきルールであり、別に大学教育で初めて教えられることではないはずです。

少なくともマイスターは、そう思っていたのですが、違うのでしょうか。
すべてを大学の責任に転嫁するのは、どうかと思います。

まして、日本の教育のトップである文部科学省の事務次官がこうした発言をされるのは、いかがなものでしょうか。
大学に限らず、児童生徒や学生が事件を起こす度に、全国の教育関係者達がいわれのない責任を追及され、「お前が教育しなかったからだ」とばかりに謝罪を迫られています。
その元にあるのは、すべてを学校に責任転嫁する、こうした姿勢ではないでしょうか。

まるで他人事のような次官のコメントに、マイスターは、驚きと怒りを禁じ得ません。

事件の契機となった体育学系学生の90人規模の追い出しコンパについて、大学側は「把握していなかった」と説明。学生の間では「他専攻の学生に知れ渡るほど有名だった」と言われており、管理の甘さをうかがわせた。

「京都教育大生準強姦事件、対応めぐり文科相と大学が対立」(MSN産経ニュース)記事より)

↑こちらもそうです。
事件が起きた責任は、大学が管理しなかったからだと言わんばかりの記述ですが、「管理の甘さ」って、具体的にはどういうことでしょうか。
一体、何をどうすることを、産経の記者の方は大学に期待されていたのでしょうか。

日本のメディアは、しばしば報道のストーリー作りのために、こういったコメントで話をまとめようとしがちですが、あまりにも強引だと感じるのはマイスターだけでしょうか。

京都教育大生6人が集団準女性暴行容疑で逮捕された事件を受け、同大学は京都市伏見区の正門近くの掲示板に「事件は人権を踏みにじる卑劣極まりないもの。被害者やご家族、関係者に心よりおわび申し上げる」との寺田光世学長名のコメントを張り出した。

コメントは「このような事件が2度と起きないよう、人権に関する意識向上に取り組む」としている。

「文科相「大学の対応に問題」 京教大暴行通報見送り」(京都新聞)記事より)

↑大学側のコメントも、どういう点で「被害者やご家族、関係者に心よりおわび申し上げ」ているのか、よくわかりません。
学生が起こした事件の責任を取るとでも言うのでしょうか。

(過去の関連記事)
■よく考えてみると不思議な謝罪

↑以前の記事でも同じことを書かせていただきましたが、意味のない謝罪は、本来ならすべきものではないと個人的には思います。

ただ日本では、メディアが「謝罪」の画にこだわります。
メディアの側は、「そうしないと世間が納得しないから」と言いますが、本当はそうしないと映像的にオチをつけられないからでしょう。
だから、「世間を騒がせたことに対して、謝罪はないんですか!?」なんて、いまひとつ意味が分からない要求と共に、臆面もなくマイクを突き出せるわけです。

↓こちらも同じです。

東京都杉並区の京王井の頭線永福町駅で31日午前、女性(59)が面識のない男に腕を取られ線路に落下し重傷を負った事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された川満康成容疑者(20)が通う高千穂大(杉並区)の成田博学長が1日、学内で記者会見した。成田学長は「このような事件が起きたことは痛恨の極み。被害を受けた方に心よりおわび申し上げます」と謝罪。「事実関係が確認され次第、厳正な対応をしたい」と述べた。

「ホーム殺人未遂:高千穂大学長「痛恨の極み」 東京・杉並」(毎日jp)記事より)

学長が本人の代わりにお詫びをする理由は、実は、ひとつもないと思います。

このように、<学生の事件→大学トップが謝罪>というのは、ほとんど疑いを差し挟む余地がないくらい、自動的にメディアとの間で行われているやりとり。
もはや慣習のようなものになってしまっています。

もちろん大学が謝罪すべきケースも多いと思いますが、そうではない場合でも、無理矢理謝罪してしまっている(させられている)ように思われます。

こうした中で、正論を主張するのは非常に難しいと思いますが、本当は誰かがこうした不思議な慣習を改めないといけないんじゃないか、なんてマイスターは思うのです。

以上、一連の報道の中で、改めてそんなことを感じたマイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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