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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

読売新聞「大学の実力」 今年は「入試方式別入学者数」も調査

マイスターです。

7月の8、9日に読売新聞の紙面に掲載された「大学の実力」調査、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
各所で取り上げられておりますし、そろそろ各大学内でも、この調査に関する議論がされた頃だと思います。

ひょっとすると中には、学内でいったん話題にはなったものの、何も発展的な話が出ずに今に至っている、なんて大学もあるかもしれません。



【今日の大学関連ニュース】
■「私大『一般入試組』少数派に…『大学の実力』調査」(読売オンライン)

学力を筆記試験で測る一般入試を受けた新入生の比率が、全国の私立大で今春、44%にとどまったことが読売新聞社の第2回「大学の実力 教育力向上の取り組み」調査でわかった。

(略)調査は5月、通信制のみの大学などを除く国内の4年制大学730校に実施。529校(国立81校、公立62校、私立386校)から回答を得た。前回も調べた退学率、卒業率などに加え、文部科学省が非公表としている各大学の入試方法別の入学者内訳や、学生への支援の取り組みなどを尋ねた。

今春の入試で、国公立は筆記試験による一般入試の入学者が81%を占めた。これに対し、私立は一般入試が44%。指定校推薦16%、公募制推薦10%、書類審査や面接などで選考する「AO(アドミッション・オフィス)」8%、付属・系列校推薦5%など一般入試以外の入学者は計46%だった。無回答・非公表は10%。

関係者の間では、大学の学力水準を維持するためには一般入試入学者の比率が最低30%必要という見方がある。この設問に答えた私立大351校の3割強が30%以下で、中には1%台の大学もあった。

学生の獲得競争を背景に入試の多様化は進んでおり、入学者の学力にばらつきが出ているようだ。調査では、ほとんどの学長が「基礎学力の向上」に力を入れるとコメント。新入生の学力を問う到達度試験や、習熟度別のクラス分けを実施している大学は、国公私立全体で80%を超えた。

(上記記事より)

「大学の実力」は、昨年に第1回目の調査が行われ、大学業界に衝撃を与えた、読売新聞による全国調査。
↓前回は、このブログでもかなりご紹介しました。

■読売調査「大学の実力」(1):大学の教育方針を知るには、卒業率や退学率の数字が必要
■読売調査「大学の実力」(2):今後は自主的な情報公開が望まれる
■読売調査「大学の実力」(3):報道の後、大学内で何が起きたか?

↓昨年は紹介するだけでなく、実際に塾の進路指導にも導入。それも、「いよいよ受験日程をふまえて志望校を決定します」という、もっとも生々しくてリアルな場で活用しました。

■大学の教育・研究内容をもとに進学指導する塾 (読売新聞「教育ルネサンス」で紹介されました)

それくらい、待ち望んでいたデータでした。

広告代理店による気の利いたキャッチコピーや、ビジュアル豊富なパンフレットは、大学を選ぶ上で、受験生達に小さくない影響を与えています。
しかし、高校教員の方々や、私たちのように大学の中身を高校生に伝える人間が進路指導をしようとすると、あまりの情報の少なさに気づきます。

●入試という「入口」と、就職という「出口」のこと以外、あまり具体的な情報が掲載されていない。
●楽しそう、キレイそうといったイメージを伝えはしても、判断材料となるデータはほとんどない。
●「スーパー在学生」や「スーパー卒業生」の例は出てくるが、大半を占める「普通の学生」の実態を伝える情報はない。
●課外活動や就職の話はあっても、肝心な「学業」をどうがんばっているかという話はない。

……などなど、大学の入試広報は、大学にとって都合の良い部分しか公表してくれていません。

今までこれで苦情がこなかったのは、「公開しないのが当たり前」だという常識があったから。
この常識を崩したのは、当事者である大学ではなく、新聞でした。

2年目となる今回は、前回も調べた退学率や標準年限卒業率などに加え、各大学の「2009年度入試方法別入学者」の内訳が掲載されています。

入学者を、

・一般入試(センター含む)
・AO
・指定校推薦
・公募制推薦
・付属・系列

に分け、各試験ごとの入学者数を大学に問うたのです。

文部科学省は毎年、入試種別ごとの大学入学者の割合を公表しています。それによって、日本全体では、一般入試による入学者が既に5割を切っていることが明らかになっています。
しかし、大学単位でその割合がどうなっているのかは、結構あいまいな部分も多かったのです。

今回の調査は、そのあたりを丸裸にするという取り組み。
AOをはじめ、推薦の内訳を細かく聞いているあたり、良くできています。


少子化で受験生が減っているにもかかわらず、大学の難易度(偏差値)が下がらないのは、大学が一般入試の定員を減らし、その分をAOや推薦に割り振っているから。
これは、業界人なら誰もが知っていることです。

もちろん、信念を持ってAO・推薦入試の枠を拡げている大学も少なくありません。
しかしその一方、実態以上に難しい大学だと思わせるためのテクニックとして、入試の枠を操作している大学もあるわけです。
大手の予備校が実施する模試の「偏差値ランキング」をもとに志望校を選ぶ受験生が多いため、大学は、偏差値の数字を落としたくないわけですね。そこで一般入試で入学させる定員を減らすことによって、「狭き門」を見た目上、維持するのです。
まさに統計のマジックですが、そんなマジックすら実現できてしまうがために、この入試別の入学者の内訳は、大学にとってはおいそれと外に出せない極秘データだったのでしょう。

今回の「大学の実力」調査では、それでも、大多数の大学が調査に協力し、具体的な数字を回答しています。
入試ごとの入学者数を明確に答えているというのは、「やましいことはなく、信念を持ってやっている」という姿勢の表れだとも言えるのかなと思います。


さて今回、色々なところで話題になっているのが、早稲田大学と、慶應義塾大学です。
というのもこの両校、入試方法別入学者の数字を、ほとんど回答していないのです。

慶應義塾大学は、入学者の総数から付属入学まで、入試に関する数字が完全に抜け落ちています。
早稲田大学は、入学者総数や、一般入試生の人数、および付属生の数は掲載されているものの、AO・推薦に関する内訳だけが隠されています。昨年に続き、退学率や標準年限卒業率もまた非公表です。

「私大の雄」と呼ばれ、世間的な評価はもちろん、入試においても高い評価を受けている2校が、肝心なデータを公開しない。
この両校の姿勢に対する批判的な意見を、いくつかネット上でも見かけました。

この両校が学術的に、あるいは教育機関として優れた大学であることは確かだと思います。
ただ、この2校が私学の雄と言われる理由の一つに、入試における「入試難易度(偏差値)」の高さがあるのも事実でしょう。
そのあたりの根拠となる数字が非公開なのですから、疑問を抱く人が出てくるのも無理はありません。

この両校の他にも、核となる重要な情報を公表しない大学が、いくつかありました。
受験生への「風評」など、様々な点で公開に踏み切るのが難しいというのもわかります。ただ、こうした情報公開の取り組みを進めていくことは今後、高等教育のあり方に関する議論を行っていく上でも非常に重要です。

「イメージ」や「世間体」だけではない大学進学を実現させるにあたり、これらの数字を重要な指標と考えている方がいるということも、大学の方々には知っていただきたいと思います。
実際、退学率が高かったり、一般入試入学者がきわめて少なかったりしても、そうした数字を隠さずに出した上で、改善策を打ち出している大学だってあります。
今後、受験生一人一人により手厚い教育・指導を行って大学に進学するようになってくれば、そうした組織の姿勢は、必ず評価されるようになると思うのです。


なお昨年は、読売新聞側が用意した質問項目の設定や調査期間の設定などを批判する大学関係者の声もいくつか耳にしました。調査方法の設定が適切でなく、大学を比較するには問題がある、といった主張です。
読売新聞の調査は、多くの大学を一律の基準で比較するという点に重きを置いているようです。しかし確かに、実際には大学によって色々と事情が異なる部分もあるでしょうし、調査に無理がある部分もあるのかもしれません。

その場合は、大学が、自ら公式サイトなどで自分たちの情報を公開すればいいのではないかと思います。
それに読売新聞では、紙面の都合も合ってか、「1大学1行」程度に情報が限られています。実際には学部ごと、学科ごとに退学率や入試種別などは違うでしょうし、もっと細かいデータもあるでしょうが、新聞ではいかんともしがたいです。
そういう点も含め、本来なら、大学が自分たちの言葉で語るのが理想だと思います。
特に、私学の雄と言われる2校には、レベルの高い情報公開が期待されているのではないでしょうか。

この2校以外の動向も含め、実際の各大学のデータをご覧になっていない方は、ぜひ7月8日、9日の読売新聞朝刊をチェックしてみてください。

以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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