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青葉台校レポート

高校生、またその保護者の方へ贈る Withコロナ時代の大学受験論考#6 【未来の大学入試編②】


みなさんこんにちは。早稲田塾青葉台校の阿部倫太朗です。 前回に引き続き、コロナ時代の大学受験の論考 第六弾を皆様にお届けします。

現役高校生の大学受験指導を15年間やってきた経験から、価値ある情報を皆さんにお届けすることで、少しでも高校生やその保護者の方の、先行きが見えない不安を解消できればと思います。

ペーパーテストに固執すべき?
 大学で学ぶ基礎学力の有無をチェックするための方法はいかにすべきか。昨年、センター試験受験者は約55万人。もし仮に、従来型のペーパーテストを実施したらどうなるか、計算してみよう。三密を避けるため、まずソーシャルディスタンスを取る。仮に、格子状に生徒を配置するとして、一人当たり2平方mの床面積を確保すると単純計算で110万平方m必要となる。これは東京ドーム(敷地面積4万6755平方m)約24個分にあたる。従来もカンニングを防ぐため、隣同士の距離は机一つ分程度は空いていたので、前後の距離を開けるために2m程度離すだけでよいか。すると、今までよりも教室数を倍にすれば良いことになる。センター試験は全国に約700箇所、主に大学を会場としてきたので、一会場あたり約8000人を収容してきた。ということは、160教室用意すれば良い(200人定員の大教室でも、前後一席ずつ空けると40人しか入らないため。)

極寒の教室に耐えながらの試験
 私が在学した筑波大学で想像すると、広大なキャンパスであったが大教室が160は絶対にない。ということは、小さな教室に小分けにして収容するしかなく、教室数が増える。すると試験監督を増やして対応することになる。関わる人数が倍になると、配布漏れなど運営ミスは低く見積もっても倍になる。しかも、空気循環を作るため一月下旬の真冬の中、窓は全開になる。東京でもその時期の平均気温は、最大10℃最低2℃。寒くて手が悴んでも、マークシートが塗れるよう今から強靭な肉体造りが必要になる。これでは、沖縄や九州地区に移住する受験生が続出するレベル。結局、そこまでして一斉ペーパーテストに拘るべきかという議論が本格化するのでは。

現実的なのはCBT
 結局、一律試験が難しいとなると、複数回実施がリアルな選択といえる。すると、現実的な手段としてはCBTだろう。しかし、これも英語4技能語学試験の導入を見送ったように設備確保に時間がかかるだろうし、何パターンもの問題を作る際、質的担保するのも難しい。今までも大学入試センター試験は作問のスペシャリストがチームをつくり一年間かけて良問を作ってきた。難問奇問は、現代文以外ではこの20年で、ほぼ無くその精度は信頼おけるものであった。しかし、来年から共通テストとなり、いままでのノウハウの蓄積が役に立たない。

根本的に学力観を刷新すべき
 そもそも、与えられた問題を手際良く答える力を鍛えることに意味はあるのか。「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 」(新井紀子 東洋経済新報社)(https://www.amazon.co.jp/dp/4492762396/)に詳細に語られているように、既に現在のAIですらMARCHレベルの入試は突破できる可能性は高いと証明済なのである。しかし、現在AIの限界点は、言語の意味理解が全く出来ない点である。平たく言えば、空気が読めず、また実際には、全く持って文章を理解することはできていないし、それができるようになる兆しもないのだ。そこで、著者の新井紀子氏は、巷で言われる意味でのシンギュラリティ(AIが人間の知性を超え、自身よりさらに強化したAIを発明できる状態)は絶対に来ないが、それでもAIに仕事を奪われるという事実は変わらないと説く。「AIにできない」のは読解する力だが、実際にテストしてみると基礎的読解力を持たない子どもが実に多いという驚愕の事実を発見したのだ。

慶應SFCのAO入試は、ペーパー試験がないが、優秀な学生を集めているのは何故か。
 そこで視点を変えて、学力について考察してみよう。竹中平蔵慶應義塾大学名誉教授曰く、慶應SFCである時期入試方式と入学後の成績や卒業後の進路について調査した際、もっとも優秀なのが、AO入試で入学した生徒、次が塾高内部進学者、もっとも低かったのが一般入試で入学してきた生徒であった。同様の報告は、東北大学やお茶の水女子大学などでもある。そこで気になるのが、慶應義塾大学SFCのAO入試では、ペーパーテストをやらずにどうやって優秀な生徒を見分けているのか。その一つに、問題発見能力というものがある。従来の学力観は、与えられた問題を手際良く答える力だとすると、問題発見能力は自分で問題を作問する力であり、対象を観察、分析し、自分で問を立て、仮説実証する力である。こうした力を、事前提出した書類と、面接にて確認するのである。

結論
 求められる学力観は変わった。しかし大学入試が相応に変わったとは断じて言えない。コロナをきっかけに、従来の受験観や実施方法の限界がはっきりと見えた今、本当の意味での大学入試抜本改革が求められている。受験生である我々も、大学が作問してくれるのを待つのではなく、自ら問を立て、その解決に向けて探究する姿勢を持たねば、大学で何を学ぼうがほぼ無意味な4年間となるだろう。そこで提案だが、自分なりに考える大学入試問題を作問し、自ら解答したプロセスをポートフォリオとして提示してみてはいかがだろうか。現行の入試制度を批判する前に、学ぶ意思があるのか自らに問うてみることから始めるべきなのである。

【バックナンバー】
#1「大学情報収集術編」4月24日
https://www.wasedajuku.com/article/wasedane_aobadai/post-18740/

#2「受験校選択編」4月27日
https://www.wasedajuku.com/article/wasedane_aobadai/post-18744/

#3「AO・推薦入試実施延期編」4月30日
https://www.wasedajuku.com/article/wasedane_aobadai/post-18790/

#4「志望大学学部選び編」5月3日
https://www.wasedajuku.com/article/wasedane_aobadai/post-18960/

#5「未来の大学入試編①」5月6日
https://www.wasedajuku.com/article/wasedane_aobadai/post-18963/

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投稿者:阿部倫太朗

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